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グリークラブか男声合唱団か

 一般の男声合唱団には、不定期なメンバーの入れ替わりが付きものです。我が大雪山麓男声合唱団も、昨年から今年にかけて、人の入れ替わりがありました。
 まず、トップテナーとベースに在籍していた学生団員達が卒業などで相次いで去り(1人は地方団員として活動中)、数年前からバリトンの中核メンバーとして活動していた方が転居のため地方団員となり、「非常勤」となりました。
 一方、以前転勤で地方団員となっていたベースの主力団員が昨年再び転勤で「常勤」にカムバックした他、今年になってからトップテナーとバリトンにそれぞれ経験豊かな方が新たに入団しました。
 私自身は「創設メンバー」ではありませんが、比較的初期の頃から在籍しているため、団員の大半を創設メンバーが占めていた時代から、しだいに新参者の比率が高まっていった過渡期、そして創設メンバーとそれ以外の団員が拮抗している今日まで、団の気質が少しずつ変化していく様子を体感してきたつもりです。
 近年、「定年後の楽しみ」として男声合唱を選んで入団される方が多くなっており、これはごく自然な流れと言えます。
 いわゆる「団塊の世代」よりも少々上の年代の方々にとって、男声合唱は音楽のジャンルとしても、大学生の部活動としてもごく一般的なもので、現在のように「特殊な分野」ではなかったため、男子高校生や大学生が「部活で合唱をやっている」というだけで好奇の視線にさらされる今日とは全く価値観が異なっています。
 中でも、1960年代の男声合唱全盛期を大学の部活動としての男声合唱団(いわゆる「グリークラブ」と呼称される類)で過ごした経験を持つ世代は、「あの感動を再び」という思いで壮大なスケールの響きのイメージを持っています。そして、合唱団の編成(人数)、運営(規律・伝統)、選曲などに強いこだわりを持つ傾向にあるようです。それらは皆、「男声合唱の真髄」を知った上での強烈な憧れの上に成り立っており、「これこそが本物の男声合唱だ」「このくらいでなければ真の男声合唱とは言えない」という信念を持っている方が多いわけです。
 実際、「本物」に触れているのですから無理もないことなのですが、残念ながら当時と同じことを今実行したとしても、当時を「再現」することはできなくなっている、ということに気付いている方は案外少ないような気がします。
 私も、どちらかといえば「黄金時代」に憧れを抱いている方の人間ですが、自分が大学生の頃には、男声合唱はすでに「斜陽期」に入っており、「奇異な目で見られた」経験を持っています。
 ましてや、現在では男声合唱は「歌っている、又は歌ったことがある人しか聴かない音楽」というジャンルになっています。女性などに純粋なリスナーとしての男声合唱ファンがごくまれにいますが、決して一般的なジャンルにはなり得ません。
 山麓の創設メンバーの多くは、この男声合唱黄金期には中高校生だったり、混声合唱団員だったりで、「本物」をリスナーとしては知っていても「体感」した人は非常に少ないのです。したがって、「いわゆるグリークラブ」である大学男声合唱団の「気風」そのものへのこだわりはあまりなく、純粋に「男声合唱のハーモニーを楽しみたい」という音楽的な動機で合唱団を立ち上げたのです。
 合唱団たるもの、人数は少ないよりも多い方が安定するし、演奏レパートリーの幅も広がりますが、地方都市で「絶滅危惧種」的な趣味である男声合唱の団員を集めることは現実的には非常に困難なのです。
 首都圏などを中心に、「一般男声合唱団の二極化」が進んで久しいという話を聞きます。「あの頃を再現」したい世代と「色々な男声合唱を歌いたい」という比較的若い世代とが、音楽性の違いから一つの団体では共に活動できず、結局どちらかが分離・独立して別な合唱を作り、分かれて活動するケースが増えているということです。
 大学男声合唱団(いわゆる「グリークラブ」)には、黄金期を支えた強烈な実績と印象がある代わりに、「当時だからできた」という面が多々あることを忘れてはいけないような気がします。黄金期のグリークラブの全てが正しかったわけではなく、その時代背景ゆえの弊害や欠点もあったはずで、少なくとも現在の一般的な価値観では求心力が失われてしまっているという現実も直視しなければなりません。
 特に、首都圏のように多様な団体が郡立して選択肢が豊富にあるわけではない地方の小都市では、異なる価値観の人々が互いを理解し、折り合いを付けなければ、共倒れになってしまうことさえ考えられるのです。
 今日の男声合唱団には「こうあらねばならない」と固定する前に、「現状がこうだから、こんな手法で行こうか」という柔軟な姿勢が必要で、今の山麓はそれを実行できる環境下にあると思います。
 今後、様々な形で新たなお仲間を迎えなければなりませんが、どのような人にも団の考え方や方向性を理解してもらうのは、合唱団にとって、入団を決めてもらうことと同じくらい大切なことなのです。
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プロフィール

事務局長

Author:事務局長
「大学に行ったら落研に入ろう」というつもりでいたのに、進学先には落語研究会がなく、男ばかりの男声合唱団に引きずり込まれて数十年。
社会人になってからも「生涯の趣味」として今もゆる~く奮闘中。
酷寒の片田舎で零細男声合唱団の番頭を務めている。